全国初の女性消防職員として、女性職員誕生50周年記念式典に先月登壇した 古尾谷(こびや) 敏江さん 元川崎市職員 68歳
川崎市消防のレジェンド
○…1969年の春、全国初の女性消防職員としてデビューした。市消防局で定年まで勤めた女性職員は自身を含め2人だけ。当時は「寿退社」が当たり前の時代。23歳で職場結婚したが、周囲の風当たりが強かった。1期生12人のうち11人が退職。長くても7、8年しか残らなかった。「私が辞めたら、女性はダメということになってしまう。後につなげたい」。その一心で頑張った。女性の声を聴き、環境整備や心のケアにも尽力。女性初の管理職にも就いた。「レジェンド」。多くの職員が敬意を込めて呼ぶ。
○…身体を動かす仕事、そして人のために働きたい。横浜市中区の実家近くに消防学校(当時)があったこともあり、高校卒業後に川崎市消防局の門を叩いた。「女性がいると思っていなかったから」と、女性初ということにも物怖じすることはなかった。火事を減らすには広報、予防が必要。当時の女性職員は予防活動に従事した。「全国初」の話題性で連日マスコミから脚光を浴びた。一方、女性を受け入れられない男性職員から冷ややかな視線が向けられることも。職場には男性トイレしかない時代。「前例がないならレールを敷くのは自分の役割」と前を向いた。
○…定年後も消防関係の講師を務め、県内を飛び回る。地域活動にも熱心で、被災地を支援するボランティアや地元神社の氏子の世話人も。木工や竹細工など、ものづくりが好きで、正月の門松を手づくりする。
○…先月、女性職員誕生50周年を記念した式典にゲストとして登壇。3人の子どもを産み育て、定年まで勤めたエピソードなどを語った。「仕事を休んでも家庭での経験が仕事に生きるのでマイナスではない。これからの女性には、いろいろなことに挑戦してもらいたい」とエールを送った。
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